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北海道における次世代半導体プロジェクト説明会及び工事計画等説明会概要

Rapidus株式会社は北海道および千歳市と共催し、 2023年5月22日(月)、千歳市において、千歳市民をはじめ北海道民の理解を深めていただく目的から、次世代半導体プロジェクトや工事計画の説明会を実施しました。

第1部「北海道における次世代半導体プロジェクト説明会」では、Rapidus株式会社取締役会長の東哲郎、北海道知事の鈴木直道氏、千歳市長の横田隆一氏が挨拶し、Rapidus株式会社代表取締役社長の小池淳義、経済産業省商務情報政策局長の野原諭氏、北海道副知事の土屋俊亮氏、IBMシニア・バイス・プレジデントのダリオ・ギル氏が講演しました。

また、第2部「工事計画等説明会」では、Rapidus株式会社専務執行役員の清水敦男、経済産業省商務情報政策局情報産業課長の金指壽氏ら関係者が登壇し、説明を行いました。

以下に内容をご紹介いたします。


【開会ご挨拶】

東哲郎 Rapidus株式会社取締役会長

東哲郎(Rapidus株式会社取締役会長)

今日は大変多くの方にご参加していただいたことに感謝しており、感動しております。

挨拶をかねまして3点を皆さまにお伝えしたいと思います。第1点目は「鉄は国家なり」という言葉がかつてありましたけれども、最近では「半導体は国家なり」ということです。国としても非常に重要になっている。皆さんの生活においても、いわゆるデジタル社会が実現しつつあり、それの基幹となる技術、産業が半導体です。残念ながら日本は1980年代この技術、産業において、世界一、50%のシェアを持っていたのに現在では10%弱ということで非常に弱い立場にあります。さらに半導体の先端技術が欠落しています。

2点目ですが、かつて、フリーダ・アトリーという学者が「日本の粘土の足」(Japan’s Feet of Clay)という本を書きました。日本は上のトップの方では、非常に近代的なものを兼ね備えていながら土台は粘土のように弱いと表現しています。まさに、半導体もそのようになっており、厳しい環境にあります。しかし、幸いなことにIBMが私たち日本に手を差し伸べてくれまして、最先端の技術を我々に技術供与していただけるということになりました。我々はこの機会を活かしていきたいと考えております。

3点目は、なぜ我々が北海道の地を選んだのかということです。半導体の産業は常にフロンティアを目指しています。北海道は明治維新以降、いわゆる開拓地としてフロンティアスピリットを持ってやってこられたと考えています。このフロンティア精神を、次の半導体産業に活かして欲しいと祈念しております。もう一つの理由は、世界の方々から、日本で行くとしたらどこだと聞くと、必ず、京都、北海道と言われます。知名度も高いこの地において、是非とも最先端の産業、最先端の技術というものを皆さまの絶大なる協力のもとに、成長させ発展させていき、世界に羽ばたく北海道という形にさせていただきたいと思っていますので、よろしくお願いしたいと思います。


鈴木直道氏 北海道知事

鈴木直道氏(北海道知事)

Rapidusにおけるこの挑戦。世界最高水準の半導体を北海道から世界に届けていく。こういった前例のない壮大なプロジェクトを皆さんとともに実現をする、その大きな一歩を踏み出すことができることをとても嬉しく思っています。本プロジェクトの成功に向けまして道として、Rapidus、国、千歳市そして産学官が密接に連携をして、何よりも道民の皆様の理解と共感を得て、この多岐にわたる課題を皆様とともに乗り越えスピード感を持って全力で取り組んでいきたいと考えています。

小池社長には講演の中で、苫小牧、千歳、札幌、石狩にかけて一帯でデジタル、そして再エネを軸とした「北海道バレー構想」ということでお話をいただけるとお伺いしています。これはまさに北海道として思いは同じであります。再生可能エネルギーのポテンシャルが豊富で、さらに苫小牧から石狩にかけてのラインを点ではなく線で結んで、デジタル、再エネ関連産業の集積を図っていくことを、我々としてはデータセンターパークと言ってきたわけですが、その強みを面として、北海道全体にこの活性化を繋げていく考えのもと、強く小池社長のその考えと一致をしていると思っています。

北海道としては、Rapidusの取り組みを核として、千歳市のみならず北海道そして日本を活性化していくと確信をしています。次世代半導体の製造に加えて、研究、人材育成、これが一体となった複合拠点の実現に向けて、データセンターパークの取組とも連携をしつつ、まちづくりにもつながるように戦略的に取り組んでいきたいと考えています。さらに、この夏までにデジタル産業振興の方向性を取りまとめ、北海道のデジタル産業の面的な振興を図って、その効果を全道に波及させ、北海道全体の経済の活性化に繋げていきたいと考えています。


横田隆一氏 千歳市長

横田隆一氏(千歳市長)

この千歳市は空港とともに発展してきたまちです。1926年当時の村民が皆さん手作りで1本の着陸場を造成しました。 それが今や、北の空の玄関口として大きく発展をしてきております。3年後には空港100年を迎えます。ちょうどそのタイミングで、この世界的プロジェクトがここ千歳からスタートするという、そうした案件に地元として関われることを大変光栄に思っています。

先人が残した貴重な財産を私達は誇りに思い、しっかりとそれを受け継ぎ、当時の皆さんが大空に抱いた夢をさらに発展させていきたいと思います。国、北海道と連携をさらに密にしながら、事業が円滑に行えるよう準備を進めてまいりたい。本プロジェクトは、千歳市のみならず、この地域、そして北海道にとりまして、更なる成長の絶好の機会になります。 将来多くの人が行き交い、この地に住んでいただく、そんなふうになれば本当に嬉しいと思っています。


【講演】

野原諭氏 経済産業省商務情報政策局長

野原諭氏(経済産業省商務情報政策局長)

「我が国の半導体政策動向」

我が国の半導体政策の中で、Rapidusのプロジェクトの位置づけ、重要性をご説明します。

まず、半導体の重要性です。デジタル化は、日本の産業の競争力を維持・強化していく上で不可欠な要素です。デジタル技術を利用するときに不可欠なのが半導体で、半導体を使わないデジタル技術はありません。半導体がなければ、電気・電子製品は作れないし動かないのです。新しい製品には最先端の半導体が使われます。

また、地球温暖化対策の鍵を握っているのも最新の半導体です。例えば、デジタル化でデータの使用量が爆発的に増えていきますが、データセンターの現在の電力消費は、日本全国で2%位の電力消費量です。全ての技術が変わらなかったと仮定すると、2050年にはデータ量の増加により、データセンターだけで日本全国の電力消費量の20倍位を使うという試算もあります。Rapidusが取り組むような半導体の微細化のイノベーションをずっと続けていくことで、2050年までに電力消費を200分の1にできる試算で、日本の電力消費の10%位にデータセンターの電力消費が収まるということになります。

しかし、1桁ナノメートルという先端ロジック半導体の生産の6割が現在台湾に集中しています。5ナノ以降の最先端の半導体に限ると、8割から9割は台湾のTSMCという会社で生産され、台湾から全世界に輸出される現状があるわけです。台湾からの供給がストップすると、世界経済にも大きな影響がありますし、我が国の国民生活、産業や経済にも大きな影響が及ぶわけです。

Rapidusのプロジェクトは、経済安保上、非常に重要な位置づけを担っています。一方で、半導体産業は非常に成長が期待されています。2020年から30年までの間に世界市場は50兆から100兆円に倍増すると言われ、130兆円になるという見通しもあります。経済安保上の重要性それから成長が約束されている産業であるという二重の背景があり、各国が半導体の産業政策を強化しているところです。例えばアメリカはCHIPS法ができ、財政出動の規模として10兆円の財政支援を講じています。中国は、半導体向けの投資の基金を作っており、10兆円を超える規模の支援策を講じております。日本は、岸田内閣になってからのこの2年弱で約2兆円の財政支援措置を予算として計上していますが、アメリカや中国に比べると一桁小さいということで、足りないじゃないかというようなご指摘を、国会でも、あるいはマスコミの方々からもいただいているところです。

日本の半導体政策ですが、3ステップで整理をしており、ステップ1というのが、当面の安定供給体制の確立ということで、TSMCの熊本への誘致といったプロジェクトです。Rapidusのプロジェクトは、ステップ2にあたり、日米連携を軸としたグローバルな連携で次世代半導体の技術の習得と産業基盤の確立を目指しています。これは2020年代後半に、国内で量産化することを目指しています。ステップ3は2030年以降を目指していますが、光電融合プロジェクトに取り組んでいます。この3つのステップ1、2、3を同時に展開しています。

ステップ1については経済効果も分析しています。TSMCの熊本の投資が補助金の額として4760億円、それからキオクシア、ウエスタンデジタルの四日市の投資が補助金の額として929億円であわせて5689億円の財政支援に対してGDPの押し上げ額が、3.1兆円から4.2兆円ということで大体補助金投入額の5倍から7倍ぐらいのGDPの押し上げ効果が出るという分析結果です。雇用の効果は、慎重に見て12万人、産業連関分析を行いますと46万人の効果が出るという分析になっています。

Rapidusの半導体プロジェクトはGAA(Gate-All-Around)という、より作るのが難しく、より立体的な半導体に変わる、ちょうど技術の変わり目のタイミングになっています。TSMC、サムスン、インテルという3大ファウンドリーが、今Rapidusが取り組んでいる2ナノのGAAの半導体をまだ量産を開始していないタイミングであり、成長する世界市場の中で新規参入のチャンスがあるという認識です。

このRapidusプロジェクトの体制ですが、量産化の拠点としてはRapidusがあり、対になる形で、LSTC(Leading-edge Semiconductor Technology Center)というオープンプラットフォームも設けています。これは設計、製造装置、素材などの要素技術、次の技術開発をするためのオープンプラットフォームであり、日本の各大学や研究機関、あるいは海外の企業や研究機関、大学と連携します。Rapidusについては、日本政府としては去年の11月に次世代半導体の研究開発プロジェクトとして採択し700億円、2022年度の支援をしました。2023年度は、2600億円予算を追加しました。

LSTCは理事長を東哲郎氏が兼ねており、各部門の部門長の方々は東大、東北大などの先生方がそれぞれの分野の責任を持っています。日本のアカデミアの総力を結集しながら研究開発、設計技術、あるいは素材や製造装置の技術の開発を進めるという枠組みです。あわせて最先端の人材育成を進める必要がありますので、そのプログラムもLSTCを事務局に立ち上げようと準備をしています。

今回ちょうど2年前に作った半導体デジタル産業戦略の改定作業をしており、国内の売上高の目標として5兆円を15兆円にする、3倍増を目指す目標を掲げようとしているところです。G7広島サミットの前日には官邸で、岸田首相に出席いただき、グローバル半導体トップ企業との意見交換会を開催しました。Rapidusプロジェクトをサポートするという発言がIBM、imec、アプライドマテリアルズからあり、Rapidusを核としてグローバルな半導体企業、半導体研究機関に、北海道に投資をいただき、半導体の産業集積をここに作っていきたいと考えております。

本プロジェクトは、国の半導体政策上このような位置づけがありますが、同時に国と北海道庁、千歳市、RapidusやIBMを始めとする内外の民間企業との官民のパートナーシップのプロジェクトでもあります。


土屋俊亮氏

土屋俊亮氏(北海道副知事)

「Rapidusの立地を契機としたデジタル産業集積の取組」

北海道庁は、Rapidusの立地と共に、デジタル産業の集積をこの北海道で目指したいと考えております。デジタル産業にはエネルギーが必要ですが、北海道は、豊富な再生可能エネルギー、太陽の光、あるいは水、そして風力など豊富なポテンシャルがあります。これを最大限活用していきたいと考えています。作った電力を首都圏と本州に持っていくだけでなく、地産地消、北海道で使い、デジタル産業など新しい産業を作っていきたいと考えています。

また、地震の起きる率でいうと都道府県の県庁所在地の中で、札幌が一番低いと言われてます。さらに、東京まで1100キロ離れてるわけですが、首都圏と同時被災するリスクも小さくなります。また、例えばデータセンターは熱をたくさん生むわけですが、それを冷やすためにまた電力も必要となりますが北海道は冷涼な気候なので、非常にデジタル産業に適していると言えます。

また、土地も安く、例えば北海道の土地は、千葉、あるいは兵庫県と比べると4分の1程度です。こうした安価で広大な土地、さらには水資源にも恵まれている。そして千歳には空港があって、近くには苫小牧港もあります。デジタル産業の発展には最適と考えています。

こうした中で、Rapidusが今年2月に北海道千歳への立地を表明されました。デジタル産業のハードとしての半導体、そしてソフトとしてのデータセンターの両面で、私ども相乗効果を最大限発揮しながら、まちづくりにも生かしていきたいと思っています。そうしたときに参考になるのが、「ニューヨーク・クリエイツ」です。アメリカのニューヨーク州が、まさしく産学官の連携でこうした産業振興、そして地域振興しているという事例にも学びながら、北海道として産業振興、デジタル産業の振興をしていきたいと思っております。

具体的には、例えば北海道は非常に広くて、また人口が希薄です。例えばドローンで物流を担っていく、あるいは、車の自動運転を進めていく、それからスマート農林水産業で匠の技をシステムで整えていくなどを行っていくとしても、大変に情報量が多くなります。そこで、Rapidusで作った次世代半導体を使ったデータセンターをうまく活用しながら、デジタル産業の振興を図っていく所存です。その一つはデータセンターパークです。

再生可能エネルギーを利用したデータセンターが道内に今続々と集積をしています。日本海側では石狩市に再生可能エネルギー100%を活用したデータセンターが集積をしています。また、千歳市は今回Rapidusが立地をされ、半導体産業の展開が図られ、そして太平洋側の苫小牧市には、海底の国際ケーブル、情報系のケーブルの接続をさせて、大型のデータセンターの展開を図っていきたいと考えています。

このエリアを重点的に整備しながら、ここで得た効果を全道に波及させていきたいと思います。具体的には、北海道は日本で一番北また一番東にありますが、例えば、それはヨーロッパとの間で、北極海を繋いでいけば東京よりも1000キロ短くて済む、そのケーブルが短くて済むわけです。また、アメリカも同様です。こういった情報のデジタル通信網をヨーロッパやアメリカ、そしてアジアそしてオセアニアと結ぶ、そうした国際海底ケーブルを実現していく、そのこととあわせて、友好国との間で情報をしっかりと管理をしながら、経済安全保障にも貢献をしていきたい。

今年の2月に北海道庁では、シンガポールでデータ産業関連事業者との商談会を開催いたしました。私どもの考えを発表したところ、非常に多くの期待が集まりました。

具体的には、スマート農業ですと、無人トラクターが夜も含めて走る、あるいは収穫日には自動的に収穫をしながら、その品質あるいは量もチェックできる、というのはスマート農業の実態です。医療の面では、例えばダヴィンチ手術という3Dカメラを使いながら、遠隔で手術をしていく、あるいは車の自動運転、それからドローンでの物流、さらにはこういったことは教育にも使えます。私どもとしては、次世代半導体を含む最先端のデジタル技術を、こうした場で実装のフィールドに整えていきたい。そのことで、私どもで実用化した技術は、全国あるいは世界の課題を解決できると思っております。それを担うのは人です。デジタル半導体人材の育成を目的に、既に今年の3月、北海道経産局が事務局になりながら、北海道デジタル人材育成推進協議会を、産学官の連携で立ち上げました。

北海道には、北海道大学をはじめ、地元千歳市には千歳科学技術大学、そして苫小牧高専も含めて様々な大学、そして高専等の高等教育機関がございます。新たに半導体人材の育成を目的とした協議会を作りました。

北海道は食べ物も美味しく、暮らしもゆったりとしているし、また余暇も楽しめます。山菜採りも東京ではなかなかできませんが、千歳だったらすぐいけば採れます。都道府県の魅力度ランキングでも、北海道は都道府県でダントツの1位、13年連続です。また市町村でも10位以内に四つの市町村が入っており、千歳も上位にございます。

これらを磨き上げ、Rapidusのものづくり、あるいはデジタルという力を得ながら、全国・世界から北海道で働く、特に理工系の人材で、今本州に行ってる方々、世界に行ってる方々を世界中からこの豊かな北海道に招いて、そして仕事の場を作り、そして素晴らしい人生を送っていただく、そういったことを整えたいと思っております。それを具体的に、次世代半導体を含めデジタル産業をどのように集積していくのか、それを担う人たちをどのように整えていくのか、そして情報系のケーブル等の基盤整備をどうしていくのか、データセンターパークの集積についても、この夏を目処に取りまとめていく予定でございます。

今後北海道庁としては、道民、市民の方々のご理解を得ながら、Rapidusそして千歳市とともに、周辺の市町村、そして国あるいは団体の皆様と強固に連携をして、北海道におけるデジタル産業の集積を目指してまいりたいと思っております。そしてそのことによって、北海道をもっともっと暮らしやすく、そして魅力的な地にしてまいりたいと思っております。


小池淳義

小池淳義(Rapidus株式会社代表取締役社長)

「次世代半導体プロジェクト紹介」

皆さんこんにちは。Rapidusの小池でございます。常日頃から、Rapidusは地元の皆様に正しくご理解いただくことが極めて重要だと認識しております。今日ここで素晴らしい会合に参加させていただいたことを本当にうれしく思います。

Rapidusは、会長の東と私の方が中心となり、それに12人の侍が結集いたしましてこの会社を作りました。経済産業省の絶大なるご支援のもと、日本の大手8社が出資をして下さいました。このRapidusの経営理念でございますが、これは三つございます。これは、会社を設立する前からこの12人の侍とずっと話をしてきたものでございます。

1点目は、人材育成です。やはり半導体に必要な人材をきちんと育成していくということ。二つ目、最終製品をしっかり意識することです。半導体のことに没頭しすぎて、これが何に使われて、どう展開するのかということをよく考えない場合があります。そうではなくて、お客様と一緒になってイノベーティブなものを作っていこう、これをよく考えることが極めて重要だと考えております。そして三つ目が、グリーン化技術です。我々としては、これをベースにいろんなイノベーションを起こしていきたいと考えております。

それでは、なぜ日本の半導体産業が今のような状況になったのか、反省と再生についてお話したいと思います。半導体の日本のシェアの歴史で言えば、1980年代には50%超えて世界ナンバーワンであった時代がございました。その後どんどんと低迷をしていき残念ながら今では10%をはるかに割ってしまうという状況にあります。

こういった中で、いろんな手を打ってまいりました。国のほうも我々民間企業もいろんな手を打ってまいりました。けれども、やっぱり解決できない問題がありました。それではなぜ、こうなってしまったのでありましょうか。それはずっと関わってきた自分の責任でもあると思うのですが、日本の半導体の駄目になった原因として、「驕り」があったのではないかということであります。

1980年代、ナンバーワンになったときに、自分たちは何でもできるのではないか、日本で全てのことができるのではないかと思ってしまった時期がありました。そこで今回は、2ナノメートルを世界で初めて開発したIBM、並びにEUV露光装置の核となる技術を持っているimecと一緒になって2ナノメートル、あるいはそこから先の技術を開発し、量産していくということをミッションとしました。これを核として、国際連携をもとに、どんどん発展させていきたいという考え方です。

IBMとは、昨年の12月に戦略的パートナーシップを結ばせていただきました。これは、世界に先駆けて、この2ナノメートルの技術を習得することができる大事な契約です。

また4月4日におきましては、欧州のimecとの提携を決めました。欧州にはASMLというEUV露光装置を独占的に供給しているメーカーがございます。ここと一体となって展開していくことが不可欠です。このパートナーシップということでは、まず最初にIBMからRapidusにこの2ナノメートルの技術をライセンス供与してもらうために、RapidusはIBMのニューヨーク州のアルバニー・ナノテク・コンプレックスにエンジニアを派遣して習得します。

既にもう7人が派遣されて、今年の夏には100人近く、さらに200人ぐらいのメンバーを送り、技術をしっかりと習得してまいります。そしてこの技術を、この地、この千歳においてしっかりと技術移管し、これをパイロット、量産に展開するという形であります。

国際連携

それでは、これからのスケジュールを詳しくご説明してまいりたいと思います。今年2023年、2024年にアルバニーにエンジニアを派遣し、一生懸命この2ナノメートルの技術を習得いたします。同時に、imecにおきましてこのEUVの技術を中心として、先端の微細加工の技術を習得いたします。そしてこの後、2025年当初にパイロット、そして2027年当初に量産を開始していくという計画です。

次に、Rapidusの差別化の戦略をご説明したいと思います。国の方は、安全保障、あるいは行政能力といった極めて重要な技術において、高性能の半導体が必要とされます。

そして民間の方においては、セキュリティシステム、自動運転、ロボット、金融、医薬を含めて、低消費電力の半導体が必要になってまいります。

この二つの分野を展開していきますと、2ナノの半導体は両方の用途に非常に優れており、需要がどんどんと高まっていくという状況となります。

さらに世界のデータ量としては、もの凄いデータの量が必要とされております。最近では2025年に何と181ZB(ゼダバイト)、皆さんはギガバイトというのはご存じだと思いますが、これの1兆倍の量です。人類はものすごいデータを必要とするわけです。

この中において今までは汎用チップということが非常に重要となっていました。これでコストを抑えどんどん展開していくということが多かったのです。でも、今まさに必要なのはそうではなくて、専用チップ化です。

早く、そして的確に展開していくということが求めてられております。我々Rapidusは、とにかくスピードに集中する、早く作る、早く対応するということが第一です。だからRapidusという名前なのです。

今日は皆さんに私たちが展開する新しいビジネスモデルをお話したいと思います。今までにないものです。Rapidusがこの設計支援、あるいは前工程、後工程をどこよりも早く作るということが最大の特徴というふうに述べてまいりました。

今日ご説明するのは、その一歩先を行くビジネスモデルをご説明したいと思います。今までは設計、前工程、後工程という形で完全に三つに分かれていたのですが、この間に大きな壁があるのです。

いろんな展開において、この壁を完全になくそうというものです。これがあるゆえにスピードが遅くなったり、効率が悪くなったり、コストアップになったりしていました。私どもは、この三つを一つに合わせることによって、効率よく、しかも早く作るという新ビジネスモデルを展開していきたいと思っております。

「RUMS(ラムス)」(Rapid & Unified Manufacturing Service)と呼んでください。ラピッド・アンド・ユニファイド・マニュファクチュアリング・サービスを迅速に、そして総合的に提供する新しい製造の形態になります。顧客の設計の皆様と一緒になって展開して、この「RUMS」でどんどん設計タイムを短くしていき、効率よく、そして更にコストも下がる可能性があります。

北海道バレー構想というアイディアをいろんな方々とこの北海道の中で議論してきました。Rapidusもこれと一体となって、日本の次世代開発製品の開発発信基地にしたらどうかということも考えております。

真に世界に開かれた、持続的に発展するまちづくりに寄与していきたいと考えています。鈴木知事をはじめとして、今、一生懸命打ち合わせをさせていただいているところです。北海道全体が元気になって日本を押し上げていこうというものです。

さてグリーン化の道でございますが、今話題のAIに関してもう一つ大事な課題があります。有名な「アルファ碁」対人間の勝負ですが、人間の方に必要だったエネルギーは21ワットです。これに勝ったAIはどうだったか。こちらは何と250キロワットで、人の1万倍のパワーが必要でした。勝ったということはすごいですが、とんでもないエネルギーが必要だったということで、AIが地球のエネルギーを使い尽くすのではないかと心配になります。

このAIを使うことによって全世界のエネルギーの中の消費電力のなんと2%ぐらいから10%以上を占めてしまうのではないかという恐れがあります。これに打ち勝つためには、グリーンイノベーションが必要です。私どもが推進していますように、半導体はどんどん微細化して、消費エネルギーをどんどん下げていくことができますし、その他あらゆる技術を駆使してこれに対応していく必要があります。

そしてもの作りもグリーン化していく必要があると思っています。グリーンファブの要件といたしましては、再生可能エネルギーによるゼロカーボン化であるとか、あるいは完全自動操業による光のない工場です。 さらに大切なのは究極のリサイクリングを行っていく、廃棄物を極力出さないような技術を推進していくことを考えております。それで今日私どもはこの名前を変えて、ファブではなくなるIIM(イーム)新しいイノベーションの場所というふうに呼びたいと思います。Innovative Integration for Manufacturing(イノベーティブ・インテグレーション・フォー・マニュファクチャリング)の頭文字です。新しいイノベーションを起こすもの作りの場所だというふうに考えてください。このIIMについてもう少し説明させていただきます。

IIM全景

こちらがIIM1、第1工場です。うまく展開できた場合には、このIIM2を展開する予定です。これは実に美しいです。これは夢ではありません。現実に作ろうと思っております。

そういった中で、この千歳市からアルバニーに展開していくこと、そしてさらにベルギーへ、そこからまた全世界に展開していく。千歳から世界、世界から千歳、まさに国際的な都市になっていくことを夢見ております。これを皆さんとともに現実の世界に展開していこうではありませんか。

皆さんと一緒に、1日も早く、メイドイン北海道をこの地から全世界に展開していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。


ダリオ・ギル氏

ダリオ・ギル氏(IBMシニア・バイス・プレジデント)

「次世代半導体プロジェクト紹介」

先週、東京でG7広島サミットが始まる直前に私はIBMを代表しまして、世界中の半導体のリーダーが集まる前例のない、岸田首相の会合に参加することができました。その会合でIBMのRapidusとの戦略的な技術パートナーシップについてお話する機会をいただきました。このプロジェクトは、次世代の半導体技術を開発するというもので、Rapidusとのパートナーシップは日米間のパートナーシップでもあります。これは日本の半導体の能力を成長させるため、また将来にわたり長く安全かつ安定したチップの供給を確保するためにも非常に重要です。世界のためにも地理的にも安定したサプライチェーンを作ることに繋がります。

Rapidusの北海道における計画により、北海道も日本が世界における日本の半導体復権を果たすための中心地ということになります。北海道へも雇用の創出など経済的なメリットがもたらされるということになります。

世界的な研究開発、そして技術のリーダーとして、IBMは長きにわたり日本において活動をしてきました。IBMとしては、半導体から人工知能そして量子コンピューティングに至るまで、日本にとって引き続き信頼できる技術パートナーであり続けると決心しています。Rapidusとともに、ここ北海道で、私どもは日本および世界にとって明るく持続可能な将来を作ってまいります。

集合写真


【第2部】工事計画等説明会

清水敦男

清水敦男(Rapidus株式会社専務執行役員)

美々ワールドに作るRapidusのIIMは、こういう外観をしております。今までの四角の箱が並んだ半導体の工場、煙突が並んだ半導体の工場とは、違った外観をしております。自然豊かな北海道千歳の美々ワールドに我々が立地する非常に重要な要素の一つが、自然とのマッチングであると思っております。右側の方が最初の建物IIM-1です。残土が出ますが、全てこの広大な敷地の中でやりくりをするということを鹿島建設と一緒に考えています。

IIM全景

工事のスケジュールについて説明します。マイルストーンとしてはまず着工です。まだ確定ではありませんが、9月1日を起工式とすることで、鹿島建設が検討しています。その前に造成というものがあります。美々ワールドは既に工場団地として整備されておりますが、実際に工事を始めて建物を建てる前に整地しなければいけません。それを9月の着工の前に始めます。工場棟は、2024年の9月ごろに工場として必要なファシリティ、電気、ガス、水、排気、そういうファシリティ関係の機器を全て立ち上げて、そこから試運転をし、製造設備の搬入を2024年の12月から開始し、ラインの稼働は2025年の4月頃からと考えております。

工場棟の方は、杭工事があります。本年9月から実際に杭を打つという作業を始めます。24年の1月から地上の躯体工事となります。実際に、IIM-1の建物としての構造体が少しずつ、24年の1月から下から出来上がっていくということになっております。土工事とともに基礎免震工事というのがあります。半導体工場は、振動に非常にセンシティブな機器がたくさんありますし、大きな揺れがあったときに大きな被害を及ぼさないように免震構造を備え付けます。これは地面が非常に大きく揺れても建物自体はほとんど揺れないというもので、大きなマンションとか、半導体以外の工場でも普通の技術となっています。それの先進的なものを我々のIIM-1にも設置して地震に強い建物を作ります。

屋根工事ですが、これが2024年の4月ぐらいから始まっていきます。そうしますと外から見ると、我々のIIM-1の立体的な構造が見えるようになると思います。クリーンルームの内装工事というのは24年の6月、これは建物の中です。

今年9月から基礎工事、杭の工事を始めて、25年の4月にはラインとしての稼働をしますが、この2年弱の中で、非常に大きな半導体製造工場、IIMと言いますが、この工事が行われていきます。

スケジュール

それでは、建設中の周辺の方々に対する影響度合いがどんなものかということを、ご説明したいと思います。まず、建設時のCO2の排出削減に取り組みます。大きく二つありまして、資材製造時のCO2削減対策、あとは建設時のCO2削減対策ということになります。まず一つ、資材製造に関して環境配慮型のコンクリートの採用を行います。コンクリートを製造するときに非常に大量のCO2を排出します。今回、鹿島建設は、高炉スラグというCO2排出が少ないコンクリート材料をメインに使います。一般的なコンクリートの製造に比べまして、約40%CO2の排出量削減を可能にします。

また、プレキャストという工事手法を使います。現地に近いところでコンクリートの構造体を作り、その構造体を現場に持ってくるということです。本州の工場で作ると、そこで作ってから千歳に運ぶまでにCO2の排出が問題になりますので、今鹿島建設は北海道の中でこのプレキャストの部材を作ることを考えており、建設計画の全体を通してCO2の排出削減に取り組みます。

その他、工事現場においては重機を使いますので、それに関しましても省エネ運転などの講習会、実習等を、鹿島建設、施工業者、実際に作業される方々に対して教育を行い、工事計画全体を通して、CO2排出削減の意識を高めようということをやっていただきます。

建設時Cos排出量削減に向けた取り組み

次は、4Rです。3Rは昔からありますが、最近は4Rになっており、リフューズが4番目のRです。リデュース、リユース、リサイクルという今までの3Rにリフューズが加わります。そもそも持ち込まない、発生させないことで、4Rになります。ひとつの事例として、美々ワールドの中に部材を持ち込み、そこで寸法に合わせてカットしますとどうしてもカットした端材が出てしまいます。よって、運び込む前の工場で既に決まった形に製作し、捨てるものがないような部材として美々ワールドに持ち込んで、そこで建設を進めます。そもそも廃棄物となるものをできるだけ持ち込まないというような活動をします。

設備配管もユニット化、これも決まった形のもののユニットにして、それを作っておいて現場で繋げていくだけということを推進することによって、美々ワールドの中で廃棄するものを生み出さないという活動を建設計画を通じてずっとやっていただくことになっております。

リデュースについては、そもそも減らしていくということですが、ゼロエミッションヤードというのを設置しまして、分別回収します。キーは、不明なものです。これは不明ですというボックスを準備して、色んなところに間違って分別がされないように不明なものは不明なものとして集めて、それを改めて正しいところに分別していきます。

リユースについては、建設資材の再利用です。塗装容器の使い回しとか、コピー用紙の両面使用とか、セメント袋の再利用など、1回使ったものを現場で他の用途で使い、廃棄物を削減します。

リサイクルについてです。これに関してはどうしても産業廃棄物として工事現場から外に出ていかざるを得ないものがあります。それに関しては、廃棄物のトレーサビリティをしっかり担保します。

工事車両の通行経路についてです。いろいろな方向から来るのではなく、1ヶ所でやりますので、ここをしっかり環境面でも管理することによって美々ワールドの外に変な影響が出ないようにすることができると考えております。

交通渋滞ですが、普通の工事のスケジュールでは、運搬業者が、朝の8時ぐらいに1日分の工事に必要なものを持ってきて作業にかかるのですが、朝8時は皆さんの通勤時間帯に重なります。そこで、1日を通じて工事車両の出入りが平均化するような調整を鹿島建設が行います。それによって、交通渋滞の影響を少しでも下げるというような努力をやり続けることになります。

工事の排水処理についても適切に行います。ノッチタンクというものを使います。これは、プール、水桶のようなもので、そこに水を1回溜め沈殿させ、上澄みから流していき工事エリアの環境に影響を与えないよう対策します。また、オイル漏れ等がもし起こった場合のキット等も現場に完備しまして、不測の事態にも対応できるようにします。

粉塵の飛散防止対策についてです。建設工事は土木工事ですので粉塵発生はゼロにはなりません。粉塵飛散防止剤というのを散布します。地面に落ちている粉塵を固定するもので、しかもその材料が生分解性を持っておりますので、非常に環境に優しい材料です。

また、工事現場には多くのトラックが出入りしますが、雨が降るとそのトラックに付いた土が工事現場からよくアスファルトの幹線道路沿いに粉塵となって残ったりします。それを極力抑えるために工事現場の中で、トラックのタイヤも水で洗います。美々ワールドの近辺は非常に綺麗な環境です。それを汚さないように、工事期間を通じて、慎重に注意を払いながら工事を進めます。

騒音振動対策ですが、これも最新式の重機を使って騒音を抑えます。

工事の情報発信については、今の状態が皆様にわかるようにデジタルサイネージを設置しまして、常に皆様に状況をお知らせして工場の情報を広く知っていただくようにします。

また、全体を通じてシミュレーション技術を使います。騒音ですとか振動、あとは粉塵の発生シミュレーションを行い、近隣に対する影響が大きいときには工期優先でそのままやるということではなく、あらかじめそれの対策を取ります。このシミュレーション技術を駆使して、周辺の住環境に対する悪影響ができるだけ出ないよう注意を払いながらこの工事を進めていきます。

鹿島建設の現場事務所においては、地元の皆様からご意見、場合によってはご批判を受け付ける窓口を準備いたしまして、その工事計画全体を通じ、皆様が不安に思われていることがもしあるのであれば、それに対して、Rapidusも一緒になって鹿島建設とお応えしていきたいと考えております。

環境保全への取り組み

IIMの建設を鹿島建設とともに進めますが、その際に、環境、周りの住民の方々に対しての注意を怠らないように理解を得ながら工事を進めていきたいと思います。もし疑問点等ありましたら、それは全て受け入れて対応を考えていきますのでご理解をいただきながら、建設を進めていきたいと思っております。


【パネルディスカッション】

司会:
本説明会の申し込み時に皆様から頂戴いたしましたご質問の中から、お声の多かったものを中心に取り上げています。パネリストの皆様方からのご回答をいただきたいと考えております。それでは最初の質問ですが、水自然環境について。大量の水を使いますし、最近メディアでも取り上げておりますPFASなど化学物質の処理についてなど、様々な環境問題を懸念する声がありますが、建設予定地周辺の自然環境への影響など、Rapidusから、ご回答いただければと思います。

清水敦男
清水敦男(Rapidus株式会社専務執行役員)

環境に対する皆様の意識や関心が非常に高いというのは我々も重々わかっております。まず水なのですけれど、自社のサイトの中で浄化する施設をちゃんと持ちます。それで浄化したものを一旦千歳市の下水処理場に入れていただき、そこの下水処理場でさらに処理をして千歳川への放流ということを考えています。工場から外に出す時点で、条例、法律で決められた基準は十分に満たしますが、地元の自治体と協定値という形でさらに厳しいところに線を引いて工場の外に放出します。

PFASは一般的な化学物質の総称で、種類としては5000種類ぐらいあるのですが、その中で半導体業界に深い関係のものにPFOAというものと、PFOSというものがあります。それぞれ特定の化学物質なのですけども、これは既に半導体の製造材料からは全廃しています。業界を挙げて取り組んでおりますので、そういう物質が入った物を工場に持ち込むということはありません。日本も世界もそうですけども、材料メーカーでは、この物質を含んだものは製造しておりません。また、ほかのPFAS問題については今日OKでも、今後どうなるかわからないところがあるので、危険性のあるPFASを含有するものは全量回収することで、我々が意図しない状態で工場の外に出るということは100%ないという体制で臨みたいと考えております。

司会:
千歳市に伺いますけれども、住民にとって良好な自然環境を確保することについて市としてはどう考えているのかお答えをお願いします。

森周一氏
森周一氏(千歳市次世代半導体拠点推進室長)

地元自治体の責務としまして、基本的にRapidusが工場建設をする前にPFASも含めて、様々な化学物質の調査をし、工場が稼働した後もモニタリングを続けていこうと考えていて、その結果を市民の皆さまにお知らせします。

司会:
工場建設時、自然関係の負荷軽減についてどう取り組むのかも、鹿島建設からも皆様にお話したいことなどがありましたら伺いたいと思います。

高野貢一氏
高野貢一氏(鹿島建設株式会社IIM-1建設計画工事事務所総括所長)

今回は環境配慮型の資材の活用や、ゼロエミッション活動、あとは建設残土の美々ワールド内での活用といったことを通じて自然環境への負荷低減に取り組んでまいる所存です。

司会:
もう一つ鹿島建設にお伺いしたいのは、工事期間中、工事関係者はどの程度の規模になるのか、またその方々の生活環境の整備というのはどのように行っていくのか。お答えいただければと思います。

阿部直樹氏
阿部直樹氏(鹿島建設株式会社IIM-1建設計画工事事務所副所長)

期間中、工事関係者作業員、あるいは私ども社員も含めまして、ピーク時最大で建築で2000名程度、その他に設備工事では4000名ぐらいの作業員が現場に従事するということを想定しています。これら多数の作業員の宿舎、住まいについては現場の近くで仮設の宿舎を建設して、作業員に入っていただくということの他に、現場の周辺のホテルなど宿泊施設を並行してご利用させていただくということもおそらく出てくると想定しています。工事事務所内、作業敷地内には食堂とか売店も用意をし、なるべくその中で極力賄おうとしています。相当数の作業員の人数になりますので、周辺の飲食店の施設とか、そういうところを利用させていただくことも相当数出てくるのではないかと思っております。

司会:
次は雇用や人材について。Rapidusに伺いたいと思いますが、工場操業時に従業員の規模がどのくらいになるのか、また、求める人材や採用の人材育成についても教えていただきたいと思います。

小池淳義
小池淳義(Rapidus株式会社代表取締役社長)

いわゆる技術者の希望でございますけど、500-600人ぐらいの規模になると考えております。これは従来のような技能員であるとかはほとんど考えておらず、かなり熟練したAIとかディープラーニングを学習した方に入ってもらおうと思っておりまして、それを全部合わせていくと1000人規模ぐらいにはなってくると思います。いずれにしても、地元の方々、大学、高専その他も含めてですね、十分なトレーニングをされた方を広く採用していきたいと考えておりますので、ご協力のほど、よろしくお願いしたいと思います。

司会:
ちなみにその地元の採用というので、トレーニングというのは進められるものなのでしょうか。

小池淳義
小池淳義(Rapidus株式会社代表取締役社長)

これはまだスタートするまで少し時間がございますので、地元の大学あるいは、高専の方々とも連携をしていくという形と、市と道とも一緒にやらしていただくということです。更に、LSTCとの連携も考えております。こちらの方は主要な大学が参加することになっておりますので、もちろん北海道大学が中心になると思います。もう一つ言うと、海外の大学とも連携して幅広くその人材を育成していくということを大きな目標としております。

司会:
続いて経済について。Rapidusの立地によって関連企業の立地というのは、どのような形で見込まれていくのかRapidusからご回答いただければと思います。

小池淳義
小池淳義(Rapidus株式会社代表取締役社長)

工場が1つあっただけでは何もできません。関連の企業にも、そばにいていただければ当然いろんな物の運搬に要する時間、CO2の排出もセーブできます。我々としては近いところにいろんなパートナー、企業に来ていただきたいと思っております。

司会:
地元での調達とか、地元企業との取引やサプライチェーンの構築についてどのように考えていますか。

清水敦男
清水敦男(Rapidus株式会社専務執行役員)

半導体の前工程、後工程もそうですけども、非常に大量の材料を使いますが、近ければ近いほど運搬時CO2の排出量が減りますので、できるだけ地場の材料メーカー、地場の企業にご協力願いたい。ただし、ある程度半導体の前工程の施工実績があるパートナーに一緒に建設計画に加わっていただきたい。建設計画だけではなくて、いろんなサービスにおいても加わっていただきたい。一方で、我々が求める品質を落とすわけにいきませんので、我々の最初の建設計画のところで、できればいろいろ少しずつ学んでいただきたい。我々はこの地で1棟だけではなくて2棟め、さらにその先も考えておりますので、将来にわたって我々のパートナーとして一緒にやっていただけるように、半導体の前工程のファブの建設なりファブの運営なりを、最初のフェーズで学んでいただきたいと思っております。

司会:
それでは千歳市に伺いますが、Rapidusの立地によりまして、地域には様々な効果がもたらされ、新たなニーズも生まれると思いますが、市は今後どのようなまちづくりを進めていきますか。

森周一氏
森周一氏(千歳市次世代半導体拠点推進室長)

簡単に言うと雇用が増え、人口が増加し、経済に波及していくということだと思います。Rapidusの立地によって、関連産業の方々から多くの問い合わせがあり、近くに立地したいというオーダーを受けていますので、どうするかということを考えていかなければならない。オフィスについても、千歳市街地に希望されるお問い合わせも多く来ています。我々自治体ができる分野と、それと民間のご協力をいただかなければならないというようなこともあると思います。街中に事務所を構えたら、千歳に住みたいということでそのマンションのご希望もあると聞いています。さらに空港の利活用というのは進んでいくため、空港の輸送能力の強化が必要だと考えています。おそらく先端の教育が実施されれば、研究者とか多様なグローバルな人材が集まってくることも考えられます。そう考えますと、富裕層とか、研究者を受け入れるような住宅地についても検討が必要というように考えております。これらを踏まえ、国際都市への飛躍を目指していきたい。

司会:
最後に次世代半導体の将来的な需要について、また次世代半導体プロジェクトを立ち上げ、2ナノもしくはBeyond2ナノという領域にチャレンジをすることの、日本にとっての意義とその可能性について教えていただきたいと思います。

金指壽氏
金指壽氏(経済産業省商務情報政策局情報産業課長)

その産業なり、経済の成長というものにとって、不可欠なのが半導体です。その中で特にRapidusの取り組みにつきましては、半導体の中でも最先端の技術を追求するということになっていまして、例えば日本でいきますと、やはりどうしても大きな産業として、自動車というものがございます。自動車も今産業としての転換期を迎えております。自動走行の実現をしていくために、当然その車は高性能にならなければなりませんし、さらにその中で電動化を進めていく中で、車の消費電力も下げていかなければいけない。そういうことが必要になってきまして、そういう日本の産業の屋台骨である自動車産業を支えるのが、Rapidusの半導体であり、2ナノ以細の最先端の半導体プロジェクトということだと思っています。このプロジェクトを何としても国として成功させていきたいというふうに強く思っております。

司会:
日本そして世界を支えるようなそのプロジェクトがこの千歳、北海道にあるということに本当にわくわくとしてまいりました。パネリストの皆様方、どうもありがとうございました。

以上


【関係者からのコメント】

千歳市議会議員 松倉みか氏(当日司会者)メッセージ
司会者・千歳市議会議員 松倉みか氏 メッセージ

かつて世界シェア5割を誇っていた日本の半導体産業は、世界的な半導体市場の拡大に埋没し衰退を続けてきました。そこに今回、次世代の半導体をもって人々の豊かな未来を創造するRapidusが、この千歳に立地をされます。世界へ立ち向かうRapidusの心意気は、荒野を切り開いてきた北海道民の開拓精神、住民総出で滑走路を造りまちの発展の礎を築いてきた千歳市民の魂に通ずるところがあると感じています。世界をリードする日本の未来に想いを馳せワクワクがとまりません。歴史の1ページを刻むこの瞬間に立ち会えること、新たな未来を創造する場にわずかながらでも携われることを誇りに思います。

公立千歳科学技術大学 事務局 林博樹氏 メッセージ

5月22日に開催されたプロジェクト説明会及び工事計画説明会に、大学事務局の一員として参加いたしました。参加者は、会場を埋め尽くす状況で、私自身、本プロジェクトの関心の高さに圧倒されました。
既に、次世代半導体関連プロジェクトとして国策レベルの取組であると承知していましたが、小池社長が説明されたプロジェクトの内容は、世界規模のプロジェクトといっても過言ではないものと確信しました。
本学は、理学と工学の融合分野の教育研究を標榜しており、このプロジェクトに対し人材育成面でお役に立てればという想いである一方、Rapidusとの共同研究や人材交流により、半導体関連分野の裾野が大きく広がることを切に願うものであります。
次世代半導体が早期に開発され、実装されること、さらにはデータサイエンス・AI技術が進展することを大いに期待しております。

北海道 経済部 産業振興局 次世代半導体戦略室 主幹 伏見絵里氏 メッセージ
北海道経済部産業振興局次世代半導体戦略室主幹 伏見絵里氏
メッセージ

今回の説明会では、1,400 名を超える多くの千歳市民、道民の皆様に参加いただいたほか、海外を含め延べ900 名を超える方にライブ配信を視聴いただきました。このプロジェクトの成功には、産学官などの関係機関が連携強化を図るとともに、多くの皆様の理解と共感を得て進めていくことが重要であり、今回の説明会はその一助になったのではないかと考えています。
Rapidusが技術開発・量産製造を目指す世界最先端・最高水準の半導体が、北海道からあらゆる産業分野に供給されていくことは、日本のみならず世界にとっても非常に挑戦的な取組です。道では、共に挑戦していくパートナーとして、プロジェクト実現を力強く支援してまいります。